「命を守る備蓄リスト」住宅視点で見る“防災収納”
備蓄は「置くだけ」ではなく「暮らしに組み込む」時代へ
地震・台風・豪雨など、いつどこで起こるかわからない自然災害。
いざというとき命を守るのは、建物の耐震性や避難経路だけではなく、備蓄と収納の仕組みも大切です。
近年では「防災収納」という考え方が注目され、日常生活の中に備えを取り入れる住宅設計が増えています。
ここでは、住宅の視点から見た“命を守る備蓄リスト”と、効率的な収納の工夫を紹介します。
1. 家族の人数×3日分が基本
災害発生直後は、物流が止まりスーパーやコンビニの在庫がなくなります。
自治体の支援が届くまでの目安は最低3日、できれば1週間分の備蓄です。
家族構成によって必要量は変わりますが、以下を基本に考えましょう。
食料・飲料
- 水:1人1日3リットル(飲料+調理用)
- 主食:レトルトご飯、カップ麺、缶詰、クラッカー、アルファ米など
- おかず:ツナ缶、カレー、スープ、乾燥野菜
- おやつ:チョコレート、ビスケット、ゼリー飲料など(糖分・ストレス対策に有効)
生活必需品
- トイレットペーパー・ウェットティッシュ・ゴミ袋
- 携帯トイレ・簡易トイレ用凝固剤
- カセットコンロ・ガスボンベ(3本×2セット以上)
- 懐中電灯・乾電池・モバイルバッテリー
- 救急セット・常備薬・マスク
これらは「家族全員が取り出せる位置」にまとめておくことが重要です。
2. 備蓄品の“置き場所”を設計に組み込む
備蓄をしていても、「どこに置いたかわからない」「奥にしまって取り出せない」では意味がありません。
住宅設計やリフォーム時に、防災収納を最初から計画することがポイントです。
玄関収納
- 非常持ち出し袋や靴、防災ヘルメットを保管
- 夜間避難用のライトを常備
- ペットボトルの水を一部ストックしておく
キッチン・パントリー
- 食料・水をローテーションしやすいよう棚を浅めに
- 「日常使いと非常時を兼ねる」ローリングストック方式が便利
- 缶詰やレトルトを使う頻度を上げて、消費と補充を自然に繰り返す
洗面室・トイレ周り
- 携帯トイレ・簡易トイレを下段引き出しに収納
- 水道停止に備えてポリタンクや給水袋を準備
- 衛生用品(マスク・ティッシュ・除菌ジェル)も同じ場所にまとめる
居室・寝室
- 懐中電灯やモバイルバッテリーをベッドサイドに
- 冬場は毛布・カイロ、夏場は冷却グッズを保管
- 家族分のスリッパ・軍手・ホイッスルをまとめておく
ガレージ・屋外収納
- 水・燃料・簡易発電機などを安全に保管
- 倒壊や浸水のリスクを避け、通気性を確保したスペースを選ぶ
住宅全体を「避難できる倉庫」として捉えるのが、防災収納の理想形です。
3. “ローリングストック”で無理なく継続
非常時専用の備蓄は、つい放置して賞味期限が切れがちです。
そこでおすすめなのが「ローリングストック方式」。
これは、普段の食事や生活で備蓄品を少しずつ使い、使った分を買い足して常に新しい状態を保つ方法です。
たとえば、
- 週に1回、缶詰やレトルトを夕食に取り入れる
- 使用した日付をメモして、次の買い替え時期を記録
- 水や乾電池も“古いものを前に出す”並べ方で入れ替える
これなら、特別な備蓄意識がなくても自然に防災準備が続けられます。
4. 備蓄品は「家族ごと」に分けておく
いざというとき、家族それぞれがすぐに持ち出せるようにしておくことが大切です。
特に小さな子どもや高齢者がいる家庭では、個別の備えが命を守ります。
- 子ども用:おむつ・ミルク・おやつ・絵本
- 高齢者用:常備薬・補聴器・介護用品
- 女性用:生理用品・着替え・小型ライト
- ペット用:餌・水・リード・トイレシート
バッグやボックスに分け、名前を付けておくと避難時も混乱しません。
5. 収納の“見える化”が防災意識を高める
防災収納のポイントは「見える・触れる・すぐ使える」ことです。
- 透明ケースやラベルで中身を一目でわかるようにする
- 家族全員が何がどこにあるかを把握しておく
- 半年に一度、防災チェック日を決めて見直す
年に2回程度、家族で備蓄点検を行い、使用期限や数量を確認しておくと安心です。
学校や職場の避難訓練と同じように、“家庭の防災点検日”を習慣化しましょう。
6. 収納リフォームで“防災力の高い家”に
リフォームを計画する際は、見た目や使い勝手だけでなく、防災を前提にした収納設計を取り入れると安心です。
- 家族が集まるリビング近くに非常持ち出し品の専用収納を設ける
- キッチンパントリーに災害時の食料・水を整理しやすい棚を設置
- 停電時も取り出しやすい高さ・動線を意識して配置
「暮らしの中に防災を組み込む」ことが、住宅リフォームの新しいスタンダードになりつつあります。
まとめ
防災は“備える”だけでなく、“使いこなす”ことが大切です。
家族の命を守る備蓄リストは、日常生活の延長線上に置くことで初めて機能します。
住宅の設計段階やリフォームのタイミングで、防災収納を計画的に組み込むことで、
「住まいそのものが防災の拠点」になる家づくりが実現します。
毎日の暮らしの中に、少しずつ防災の意識を取り入れていきましょう。